行政書士&遺言執行士akito's blog in横須賀

行政書士の墓じまい・相続業務を小説風に面白おかしく書いています。今書いているのは、出版予定の三作目の小説です。

エンディングノートと終活講義・前半④

 

 

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「大変賑わっているなか恐縮ですが、そろそろ本題に入らせて頂きます。皆様のお話しをお伺いしていると、エンディングノートの作成に相当苦労されていらっしゃいますね。これは当然の事です。何故なら、あらゆる事柄が十把一絡げになっているからなんです」

そういうと先生は咳払いをして、わざとらしく間をおいて、再び同じ事を繰り返した。

「そうなんです、十把一絡げになっているんです」

言いたい事をやっと言えたという顔をして悦に入っている。
なるほど先程言いたかったのは玉石混交ではなく十把一絡げの事だったようだ。若干国語力に問題があるが、それを指摘するのは大人げないというものだ。

「皆様、数学の問題が二十問あったとします。その内容が足し算、引き算から幾何学の問題だとします。どうですか。簡単に解けるでしょうか。無理ですよね。エンディングノートも同じなんです。完成させる事は字面で受ける印象程簡単ではありません。むしろ完成させる事を目的とせず、気楽に書いていく気持ちで十分です」
「てっきり書き上げなきゃ駄目なんだって思ってた。そうじゃないみたいですね」
隣の女性が私に呟く。
「正式な書面じゃないですからね。あくまで自分の事を書いてみるといった気持ちで大丈夫だと思いますよ」
隣の女性との話しに夢中になりかけたが今は講義中である事を思い出した。
「前半の講義では主に本人しか分からない事で、エンディングノートに書く事が望ましいものを幾つかピックアップします。では最初にお配りした山本作エンディングノートの二ページ目をご覧下さい。御自身のお持ちの物でも結構です」
さりげなく自分の名前を言うところがまた嫌らしい。
基本的な事ではあるが自分の名前、住所、連絡先、好きな食べ物、花、季節等は楽しみながら書いてほしいとの事だ。 
健康保険証、バスポート等の保管場所は書いておかないと残された者が困るというが確かにそうだ。
重要度のレベルが上がるものとしてはアレルギーがある。
食べてはいけない食べ物もさることながら、薬剤についてアレルギーがあれば必須との事だ。
介護については地域の包括センターや、市の高齢福祉課に相談する事ができる。
但し、後見人をつける話しになったらメリット、デメリットを必ず確認する事が大事である。
また借金やローン等の債務は借入先、借入金額を含めて書いておくことが重要である。
というのも債務を負っている人に万が一の事があると返済するのは家族の可能性が高い。
更に相続するかどうかは通常亡くなってから三カ月以内にするものである。
まれにではあるがこの事を知っている業者が三カ月過ぎてから遺族に請求する場合がある。
その様な理由から残された家族としては、できるだけ早く借金の有無を知っておく必要があるのだ。
「次に少し重たい話になります。自分に万一の事があった場合、例えば病気や、交通事故の時の延命措置をどうするかという問題があります。この延命措置、延命治療と言ったらしますが具体的にどの様な状況で必要かご存知の方いらっしゃいますか」
治療しても効果がないとかだったと思うが何だったけかな。
どこからか声が上がった。
「確か回復の見込みがない状態で、人口呼吸器を付けて延命させる事だったような気がします」
「お仰る通りです。エンディングノートにも書く欄はあります。延命措置をしてほしいのであればエンディングノートの記載通りに書いておけばよいかと思います。問題は延命措置を望まない場合です」
皆真剣な表情をしている。
誰しも家族に負担をかけたくないのは同じであろう。
「まず大前提として延命措置を望まない場合についてはあらかじその意思を示しておく必要があります。その一つの方法としてエンディングノートがあります。それを読めば残された家族にとっては判断の一つの材料になります。但しエンディングノートは何ら法的効果はありません。より確実なのは尊厳死宣言書を作成し、それを公正証書にする必要が出てくるでしょう。他にも緩和ケアや臓器提供などの問題もあります。時間の制限がありますので全てを一からご説明はできません。是非ともエンディングノートを一つのきっかけにして、このよう問題を考えて下さい。私もエンディングノートを中心としたご相談を承りますので是非ご検討頂けたらと思います」
そう言うと大きく一呼吸ついた。
最後の一言は営業トークだろうか。
「そろそろ時間ですので、講義の前半を終了します。後半は、エンディングノートでは解決しづらい難易度の高い項目をご説明します。それでは十分間休憩にします」