行政書士&遺言執行士akito's blog in横須賀

行政書士の墓じまい・相続業務を小説風に面白おかしく書いています。今書いているのは、出版予定の三作目の小説です。

エンディングノートと死後事務委任⑤

横浜Denaが負けました。

今日勝てば五割復帰だったんですが残念です。

このつめの甘さ、まるで自分を見ているようです(>_<)

 前回は以下です。

www.akihiroha.com

 

 

 

横須賀中央、某居酒屋


「亜紀さん、いい飲みっぷりですね。それによく食べますね。感心してしまいます」

まったく人を牛みたいに、たしかにそう言われても仕方ないけどさ。
あれっ、さりげなく名前で呼んだけど私の気があるのかしら。

「あのですね、先生から飲みたいって誘ってきてるんですよ。もう少し他の言い方はないんですか」
「あっ、すみません」
「すみませんじゃなくて」

いつもこんな調子だ。
まっいっか、名前で呼んでくれたし。

「ところで何で急に飲もうって誘って下さったんですか」
「それがですね、他に誘う人がいなくって」

私と飲みたいんだくらい言えないのかしら。

「一つ聞いても良いですか。どうして今の事務所に決めたのですか」
「それは場所の事ですよね。確かに駅からは遠いですし、ちょっと後悔はしています。知り合いの方が相場より安く貸してくれたんですよ」
「成程ね。あれっ、何か鳴ってますが先生の携帯じゃないですか」
「ちょっと失礼します」

そういうと先生は携帯を持って一旦店の外に出た。
金曜だというのにお店にさっと入れるのは横須賀のよい所の一つだ。
これが横浜だとそうはいかない。
もっとも人口、特に若い世代が減ってきているという事もあるのだろう。
そう考えると少し複雑な気分になる。
そうこうするうちに先生が戻ってきてその後小一時間飲んだ。

帰り際駅の前の広場、通称Yデッキと呼ばれる所に来たとき先生が立ち止まりおもむろに口を開いた。

「実は先ほどの電話の件ですが」
「どうされてんですか」
「亜紀さんのご友人、緑川咲様のお婆様が亡くなられました」

 

緑川家


「先週のお袋の葬儀には何人くらい来てくれたのかな」
「三十人くらいかしらね」
「しかし慌ただしかったな。ガンって聞いてたから覚悟はしてたけど」
「葬儀屋さんがほとんどやってくれたから良かったけど、なんだか右から左って感じだったわね」

「それはそうと、なあ朋子、このお袋の残したノート、エンディングノートっていうのかな。どうしたら良いのかな。だいたいお袋が亡くなった息子、僕にとっては義理の兄になるんだろうけど、その人のお骨が入った骨壺を持ってるなんて知らなかった。大体そんなものどこにもなかったぞ。しかもこっちには一言もなしに樹木葬がよいとか。親父と同じお墓じゃ駄目なのか」
「最終的には聡さんが決めることよ。ただ、そこに書いてある樹木葬だっけ、そこにお子さんのお骨と一緒に埋めてほしいっていうのはどうかしら。だってどこの樹木葬を選べばよいのよ。その費用はどうするの。亡くなった息子のお骨が入った骨壺なんてないじゃないの。そもそもこれはお義母様の希望、っていうかただの願望でしょ。でもこれって私たちの時間を奪うのよ。こう言っちゃなんだけど、こんな大事なことを事前に相談もなく、こんなノートに書いて後はよろしくって無責任よ」
「エンディングノートっていうくらいだから大事なものじゃないのかい」
「以前法律事務所で働いていたからわかるわ。名前はご立派だけどただのノート。単なるメモ帳よ。法律上はなんの意味をなさないわ。本当に大事なものは遺言とか、亡くなった後の事務の契約みたいに時間をかけて作るものでしょ。法律は苦労して作ったものにはそれなりの効果を与えてくれるけど、お手軽なものにはそれなりの事しか与えないのよ。ていうか何にも与えてないわ」
「そうなのか、じゃ立派なのは名前だけで法律上は意味がないのか」
「意味がないも何もただのメモ帳よ。法的効果はゼロよ」
「それならお袋の骨は親父の眠るお墓に入れて大丈夫なのかな」
「うん、それで問題ないわ。それに聡さんのように葬儀を取り計らった人のことを祭祀承継者というの。この祭祀承継者はお墓やお骨の事を決める事ができる権利を持っているわ。申し訳ないけど、エンディングノートに書いた事が祭祀承継者の権利より強いなんて赤子でも思わないわ」
「わかったよ。後はこの行政書士からきた遺言執行者の就任通知、これってなんだ」
「それは問題ないわ。多分聡さんへの相続の手続きをするのよ。そっちは積極的にお手伝いしなきゃだめよ」
「どんな事すれば良いのかな、必要な書類があれば準備しておくけど」
「遺言書を持っているんじゃないかしら。そのうち連絡来るわよ」
「今回の相続手続きとは別件で一度お会いしたいって書いてあるけど何だろうね。とりあえず連絡してみるよ」
「そうね、もしかしてお義母さんに他にも子供がいたとかね」
「そういう悪い冗談はやめてくれよ」
「ごめんごめん」

 

 

想いを紡ぐ墓じまい: in 横須賀 (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

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